ネイルスクールを卒業した直後に働き始めた横浜駅近くのネイルサロン。某商業施設内にあり、本当に色んなお客様がいらっしゃいました。
主な客層はネイルサロンのメインストリームである20〜30代の女性でしたが、中には
「学校が夏休みなので初めてネイルしに来ました」という女の子や
「ヴィジュアル系バンドやってます」という男性、
「50年前からネイルは欠かしてないの」という年齢不詳の女性など…
本当に色んな方がいらっしゃいました。
その中でもわたしが青春時代を謳歌していた時代に、毎月欠かさず読んでいた雑誌の読者モデルが来店した時は大興奮。
今だったらあり得ない接客ですが、いかにその方のコーディネートを参考にしていたかマシンガントークした記憶がありますww
さて、そんないわゆるどこにでもあるネイルサロンですが、ある日そのサロンで一番印象に残っているお客様がいらっしゃいました(やっと本題)。
その日は朝番がわたし1人だけのシフトで、予約はなし。
暇な時間を持て余してサロンの雑用をこなしていると、初めてらしき男性が来店しました。パッと見は30代後半、スーツ姿で右手には鞄を持っています。
「すいません、初めてなんですがいいですか?」
商業施設内のネイルサロンということで男性の来店も珍しくなく、「もちろん大丈夫ですよ」と接客に入りました。
男性のお客様の場合、甘皮の処理をして爪を磨くいわゆる「ケア」をオーダーする方が多かったのですが、その男性のオーダーは意外にもスカルプ。
スカルプは爪の長さを出すもので、男性の場合例えば野球などの球技をしている方は割れた爪を直したり、自爪が割れないように強化したり、といった目的でスカルプを施術したりします。
しかしその男性はスーツ姿でしたし、週末に草野球でもやっているのかな?と思いつつ手を見ても球技をやっているような手ではありませんでした。
頭の中に「???」が浮かんだところでお客様から「右手の親指だけ、長さは5mmぐらいで」と慣れた口調でオーダーが。
さらなる「???」が頭を巡ったものの、なぜかそのスカルプの目的を聞いてはいけない気がして「今日はお仕事なんですか」「最近暑いですね〜」という無難な会話を展開します。
とは言えスカルプ1本だと20分もかからないので、この世で一番中身のない会話をしているうちに完成。
「いかがでしょうか?気になるところはありませんか?」
「ありがとうございます、大丈夫そうです」
さぁお会計…と席を立とうとすると
「・・・あ」
という声が聞こえてきます。
「?どこか気になるところありましたか?」
「いや、そうじゃないんですけど」
「ちょっと試してみてもいいですか?」
「(試す?試すってなにを?)はい、大丈夫ですよ」
男性が来店してから30分、一番のハテナが浮かんでいるわたしを尻目にお客様が来店時右手に抱えていた鞄を開けました。ガサゴソと持ち上げたお客様の手には…
\ウクレレ/
おもむろに今スカルプを付けたばかりの右手親指を使って演奏し始めるお客様。2人きりのサロン内で、1人のネイリストを前にウクレレを弾くお客様。めちゃくちゃ上手い。あれ?今わたしハワイにいるんだっけ?と思ってしまうほど綺麗なウクレレの音色がサロン内に響きます。
笑ってはいけないし、スカルプの具合を確かめるために弾いているのだから席を外すわけにはいかないし、まさにこんな時どんな顔をすればいいか分らないの…。
たぶんウクレレを弾いていた時間は1分程度だったと思いますが、「サロン内に2人きりの状態で、ウクレレを弾かれている」という状況が衝撃的すぎて30分にも1時間にも感じました。
球技をやっている人と同じで、爪を守るためにギターやベース、そしてウクレレを弾く人がスカルプをする…と知ったのはそのあと。もちろんお客様のおかげです。
ということで、ネイルサロン勤務時代に一番印象に残ったお客様(とその状況)のお話でした。
もしウクレレを弾く方がこのブログを読んでくれていたら、ネイルサロンでオーダーする際はまず始めに「ウクレレ弾くからスカルプやって」とオーダーしてくださいね。心の準備ができますので…。
ちなみにそのお客様にはウクレレを弾き終わった瞬間、「ちょ!スゴイですね!ビックリしすぎて笑っちゃってすいません」と若さゆえの発言をしたところ「あ、いつもビックリされますwww」と言われました。確信犯!